児童らが狙われる事件が起きる度に幾つもの課題が浮かび上がる登下校時の安全対策。国や自治体などはこれまで、児童らが1人になることを避ける策を打ち出し、スクールバスも推奨していたが、川崎市の殺傷事件ではそのバスを待つ列が狙われた。「社会の意識の変化も必要なのかもしれない」。専門家は意識改革と警戒強化を訴えている。(大渡美咲)
■「防ぎようない」
被害に遭ったカリタス小は、通学時の児童の安全対策に力を入れていた。JR線・小田急線登戸駅と学校を結ぶスクールバスは朝8本運行され、いずれも教員が駅の改札で児童を集め、200メートルほど離れたバス停まで引率。バス停にも教員を配置していた。
だが、不審な男が両手に刃物を持って現れることなど、全く想定していなかった。男は約50メートルを十数秒で駆け抜け、児童らの列を襲撃。捜査関係者は「逃げる余裕もなく、防ぎようがなかった」と話す。
■1人にしない
登下校時の安全確保については、児童が巻き込まれる事件が起きる度にさまざまな策が講じられてきた。平成17年には広島市と栃木県で、小学1年の女児が下校中に1人になった隙を狙われ、殺害される事件が発生。文部科学省は見守り活動の強化のほか、路線バスを通学の手段として活用するように促した。
しかし29年3月、千葉県で小学3年の女児が1人で登校中に殺害され、見守り活動をしていた男が逮捕される事件が起きた。また、昨年5月には見守りの死角を狙われる形で、新潟市で小学2年の女児が連れ去られて殺害される事件が発生した。
このため政府は「登下校防犯プラン」を策定。児童や生徒を「極力1人にしない」という観点でスクールバスの有効性を示していた。
文部科学省によると、小学校のスクールバス利用率は17年度の8・9%から27年度には15・7%に増加。私立では44・6%(27年度)を占めているという。
■意識変革を
だが、そのスクールバスを待つ列が狙われた。学校安全教育研究所の矢崎良明氏は「日本は地域で子供を守ることに主眼が置かれているが、完全な安全は存在しない。自分の子供は自分で守るという保護者の意識変化が必要な時かもしれない」と話す。
同研究所などによると、英国では、小4程度までは保護者が通学に付き添うのが一般的。スクールバスもバス停に児童らを集めるのではなく、欧米では自宅前から直接乗車するシステムが普及する。
カリタス小でも登校再開に際し、駅からバス停までの警備強化や、当面は保護者による車での送迎も認める措置を取った。
矢崎氏は「バス停に集める場合は、そこまでの安全確保も必要になる。子供を送り届けてからの出勤を認めるなど、社会全体で子供の安全を守るという意識も求められる」と話している。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース